日銀のETF買い入れ手法についての経験則

 

 

日銀のETF買い入れ枠は残り一か月でおよそ7000億円残っています。ペース的には11月でやや遅れを取り戻しました。

 

・BOJ ETF買い入れペース(含む設備投資・人材ETF)

 

一回の買い入れ額がおおよそ730億円であることを考えると、残り9回ほど残っている計算になります。12月の営業日数を考えれば、2日に1回程度のペースで入ることになります。しかし、注意しなければならないのは、6兆円はあくまで目安とされていることです。

ロイター1017/10/31 日銀総裁会見:識者はこうみる

律儀に6兆円に達するように帳尻を合わせるとは思えません。

 

BOJのETF買い入れ手法に関しては市場の経験則がいくつかあります。

まず代表的なのが前場の騰落率によって買い入れか否かが決定される点。BOJがTPX型のETFの買い入れ割合を増加させて以降、特にTPXの前日比プラスマイナスが重視されるようです。

 

もう一つ重要な点は、ETFの買い入れはマーケットには先物買いを通じて影響がでていると考えられることです。

指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領

日銀によって公表されている買い入れ指針によると、買い入れ価格は「原則として、金融商品取引所における売買高加重平均価格または当該価格を目途として受託者が取引する価格とする。」とされています。いわゆるVWAPがベンチマークとされているのですが、これがETFにおいては厄介です。というのも、ETFは相場の環境や、アービトラージの状況、大口のいた注文にVWAPが左右されることが多く、ベンチマークとして追随するのはあまりにも困難だからです。

この対策としての方法は2通り考えれるでしょう。

1つめはETFの設定を経て、指数構成銘柄のVWAPを取りに行く方法。TPX等のETFは基本的に現物拠出型です。つまり設定したい業者が、現物株を買い入れ、それを運用会社に持っていくことでETFをもらえるわけですが、この「現物株の買い入れ」時にそれぞれの銘柄のVWAPで調達するように努力するということです。が、これは実際現実的ではないでしょう。というのも、TPXともなれば2000銘柄程の構成銘柄数であり、いくらBOJの買い入れ額が大きいとはいえ、スモールキャップの銘柄はVWAPをベンチマークで取引できるほどのロット数はないと思われるからです。

2つ目の方法が先述した先物を使う方法です。先物でVWAP的に分散させて執行することにより、分散執行の趣旨を達成することができます。この場合、買い入れた先物をEFP取引によって、現物に変換する取引を同時に行います。このEFP取引によって、現物株を調達した後、この現物株を運用会社に持ち込み、ETFを設定します。

市場の経験則的には後者、つまり先物を通じてETFの買い入れが行われている可能性が高いでしょう。BOJの買い入れがあった日には、ドイチェの先物手口が目立つことが多く、彼らが執行している可能性があります。

この場合、主体別売買動向ではBOJの買い入れは証券ディーラーによって行われるため、「自己」の先物で出ることになるでしょう。BOJと証券会社のクロスはOTCで行われているため、実際のETFの約定は、主体別売買動向の集計対象外です。

 

 

 

ブロックトレードとは

証券会社と機関投資家の間では時々ブロックトレードなるものが行われます。

 

そもそもブロックトレードとは株券の保有者が一度に大量の保有株を処分したい場合、証券会社との相対取引で価格を決定し、一気に引き取ってもらう取引です。証券会社は現値よりもディスカウントされた価格で大量の保有株を仕入れ、それに少し上乗せした値段で、機関投資家に売却します。つまり証券会社の儲けは①「機関投資家に売却した価格 - 仕入れた値段」、②「売却時に得られる手数料収入」ということになります。

機関投資家がブロックトレードに参加するインセンティブは①「売却価格が、その後の売却インパクト等を考えても割安な場合」、②「証券会社との関係を強化し、大切なお客様扱いされることで、その後の人気IPO等で有利にことを進めることができるようにする」ということが考えられます。①は単純に需給の問題であり、これはどこのブローカーが行おうと考えることは一緒です。②は証券会社の力に依存します。機関投資家が関係を強化したいような証券会社であれば、②の力は強まります。これは翻って証券会社のセールス力で図ることができる指標でもあります。それがブロックトレードがセールス主導のビジネスといわれる所以です。

 

ブロックトレードがある際には、証券会社が「仕入れ値」をコンペしていることが通常でしょう。現値からのディスカウント幅を小さく(値段を高く)提示できた証券会社がその取引を取り扱うことになります。このディスカウント幅を提示する力は、その会社のセールス力に依存します。小さなディスカウント幅でも捌ききれる自信があれば、小さなディスカウントを提示することができます。日本市場のブロックトレードで国内系証券の存在が大きいのは、こういった背景があります。

 

さて、今市場の一部では「とある国内系証券がブロックトレードを捌き切れなかったらしい」と話題になっています。この場合には、証券会社は自己勘定で一時的にその株を保有することになり、市場でその在庫を解消することになります。もし、仕入れ値よりも低い価格でしか売却できなかった場合、それは純粋に証券会社の損失ということになります。大量保有報告書等で、捌けたか否かは推測ができます。そういった場合には、証券会社自己の売却による売りフローが推測できるため、先回り的に売りを仕掛けるヘッジファンド等も存在するケースがあります。そうなるとブロックトレードの収益は厳しいものになります。

セールス力に見合ったディスカウント幅を提示することがブロックトレードで非常に大切になります。